導入事例

老舗物流企業・第一貨物が挑戦したスモールスタートの人事施策 大量採用から「エンゲージメント強化」への戦略転換

第一貨物様トップビジュアル
スモールスタートではじめた エンゲージメント向上による離職防止施策
第一貨物株式会社 様
業種
サービス・インフラ
従業員数
約5,500名(2024年6月現在)
設立
1941年
本社
山形県

課題背景

配達業務の外注比率を下げる「自社化」の経営方針のもと、社員の大量採用に成功。しかし、アフターコロナにおける社会環境の変化とともに離職防止が課題に。そのため「大量採用」から「既存社員のエンゲージメント強化による離職防止」へと人材戦略を大きく転換。
これまでも離職原因を取り除くことに取り組んできたが、仕事の達成感や自己成長といった動機づけ要因を増やしていくアプローチを探るために、エンゲージメント診断を活用し、その結果をもとに施策をおこなっていくことにした。

成果

「エンゲージメント強化による離職防止」に対し、経営層ならびに約5,500名の社員から理解を得るため、一部部門からのスモールスタートでエンゲージメント診断を実施。
これまでなんとなく感じていた課題が数字として示されることで、実効性のある施策を考えられるように。施策に対してもポジティブな反応が得られた。
管理職向けの報告会において、診断結果と施策、人事担当者の実感の両面から有用性を説明したことで、社長の意識も変化。現在は取り組みを全社に拡げていこうという方向性のもと、社員全員に対してエンゲージメント診断を実施できるよう準備を進めている。

有効求人倍率が最後に1を切ったのは、2013年。そこからもう10年以上、「人材不足」の時代が続いています。どの業界でも採用には苦戦していますが、もう一方の課題として、せっかく採用した社員が離職してしまう「定着難」を感じている企業も多いでしょう。

その傾向は、いわゆる「2024年問題」に直面する運輸・物流業界でとくに顕著です。
マイナビの調査によると、同業界における2023年の中途入社者の採用数は全業界平均に対し153%。同じく退職数は全業界平均に対し実に146%と、「大量採用・大量退職」の傾向が強く人材流動性の高い業界であることが見てとれます(※)。

※ 出典:マイナビキャリアリサーチLab 「中途採用状況調査2024年版(2023年実績)」(https://career-research.mynavi.jp/reserch/20240325_71337/)
(参考:2023年全業界平均採用者数21.8人に対し、運輸・交通・物流・倉庫業界は同33.4人 / 同 全業界平均退職者数15.6人に対し、運輸・交通・物流・倉庫業界は同22.8人)

そんな中、東北を基盤とし東日本を中心に全国展開を図る、特別積み合わせ輸送の大手、第一貨物株式会社では「大量採用」から「既存社員のエンゲージメント強化による離職防止」へと人材戦略を大きく転換。マイナビでは人材開発・組織開発の観点からその戦略実行をサポートしています。

人材戦略を転換された理由、そしてエンゲージメント向上の取り組みについて伺いました。

大量採用を続けるか、離職を防止するか…… 第一貨物に迫られた決断

本日はよろしくお願いします。まずは率直に、御社が抱えていらっしゃった人事上の課題はどのようなものだったのでしょうか?

仁科 秀樹さん
(以下、仁科)

当社は今年で創立83年、おかげさまで現在では社員数約5,500名(正社員 4,500、契約社員1,000)、国内に130以上の拠点、更には海外にも事業進出する企業に成長しました。一方でそれだけの社員数がいるとやはり、人事上の課題も山積しているのも事実です。
とくに強く課題を感じていたのが、人材の定着です。コロナ禍以降、新卒100名前後、中途300名前後の採用を毎年続けていましたが、同業他社と同様、離職率が高いことに悩んでいました。

第一貨物株式会社 仁科様
兼子 邦浩さん
(以下、兼子)

それ以前は中途採用にも苦戦していました。ところが、コロナ禍の最中に他業種から物流業界へとキャリアチェンジで入社された方が多くいらっしゃって、飛躍的といっていいほど社員数が増えたのです。

そして、それを機に配達業務の外注比率を下げる「自社化」の経営方針を一気に推進しました。事業の収益性も高まり、その点では成功だったと思います。

しかし、コロナ禍の落ち着きとともに社員が転職前の仕事に戻ったり、他業種に移ったりといったことが増え、今度は離職防止対策に頭を悩ませるようになりました。そして同時に、他業種でも採用が活発化したことで相対的に採用の難易度も上がっていきました。

つまり、コロナ禍による環境変化によって大量採用が叶ったものの、その落ち着きとともに今度は定着と採用の両面に新たな課題が生まれた、ということでしょうか。

兼子

その通りです。自社化の推進は成功しましたが、その維持が課題として浮かび上がったのです。

そこで大きな決断を迫られることになりました。
離職を前提とした大量採用を続けるか、または離職を防止して社員数を維持するかです。

決断は「エンゲージメント向上による離職防止」その背景は?

そして、御社では「離職を防止して社員数を維持する」方向へと舵を切られたのですね。

兼子

はい。自社化の方向性は維持したい、しかし採用が難しくなってしまった。このジレンマを解決するためには、離職防止に注力すべきだと考えました。

無理して大量採用を続けようとすれば採用コストはもちろん大きくなりますし、その後の教育コストも無視できません。しかし社員が離職すればどちらのコストも無駄になってしまいます。論理的に考えて、自然と出た決断でしたね。

仁科

兼子のいう「ジレンマ」の中で、人材戦略も「量より質」に転換しました。新しく入ってくる社員はもちろん、すでにいる社員にも研修などのケアをしっかりおこなって、質の高い優秀な社員で会社を構成してそれを維持する方が理に適った方法だと考えたのです。

そこで注目されたのが「エンゲージメント」の考え方ですね。

大川 佐知さん
(以下、大川)

はい。マイナビさんには新卒採用などで長くお世話になっていて、情報提供や採用施策のご提案をよくいただいていました。その中で、当社の採用・人材戦略の方針転換をお話ししたら「組織診断を通じてエンゲージメントを高める施策をおこなった方がいい」とご提案をいただいたんです。

兼子

実は、これまでも社員アンケートをもとにして不満要因を取り除くような取り組みはおこなっていました。

しかし、離職原因を取り除くことと、働きがいや成長意欲を高めることは、似ているようでまったく別のことです。いわゆる「ハーズバーグの動機づけ・衛生理論(※)」です。

これまで当社がやってきたのは会社の方針や管理方法、労働環境といった衛生要因を取り除く施策でした。しかし、これだけでは限界があります。

そこで、仕事の達成感や自己成長といった動機づけ要因を増やしていくアプローチを探るために、エンゲージメント診断を利用し、その結果をもとにした施策をおこなっていくことにしました。

※ ハーズバーグの動機づけ・衛生理論:アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱したモチベーション理論。
仕事に対し、満足を与える要因(動機づけ要因)と不満を与える要因(衛生要因)は別のものであることを提唱した。

第一貨物株式会社 兼子様

スモールスタートでのエンゲージメント診断で実感した効果

その手段の1つとして、エンゲージメント診断をご利用いただくことになったのですね。

兼子

はい。ただ、導入にあたっては2つの大きな課題がありました。
1つは、当社にとっては新しい概念と取り組みであることから、経営層ならびに5,500名の社員の理解が得られるのか、という点です。とくに、当初は社長もエンゲージメント診断には懐疑的な立場だったので、全社的な導入までのハードルは高く感じましたね。
これまでは管理職の「勘と経験」でおこなってきた部下の指導を、根拠を持って判断しおこなっていくという方向性に私は強く可能性を感じましたが、それをどれだけ理解してもらえるかと。

大川

もう1つは、コストです。これまで当社ではエンゲージメント診断をおこなったことがありませんでしたが、良し悪しは別として、それでも事業運営はできていました。
なので、新しいコストを抱えてでもやるべきことなのか、という疑問があることは容易に想像できました。

どのように導入に向けての機運を高めていかれたのでしょうか。

大川

まずコスト面については、crextaに搭載されているeラーニング機能が1つの決め手となりました。
当社では以前から管理職向けにeラーニングを取り入れていましたので、それをcrextaで代替し、なおかつ一般社員向けの階層型研修にも利用することでコストの重さはある程度解決できると分かったからです。

兼子

コスト面の課題はそうして解決の糸口が掴めましたので、社内の理解を得るために、まずは人事部に限定したスモールスタートを切って効果検証しようと、2023年度から始めてみることにしました。

結果はいかがでしたか?

大川

現状、良い方向に進んでいると思います。私自身、社員の一人としてエンゲージメント診断を受けてみて発見もありましたし、仕事にやりがいを覚えられるようになったと実感していますね。

兼子

人事部の管理職としてエンゲージメント診断の結果を受け取る立場の私としても、これまでなんとなく感じていた課題感が数字としてはっきりと示されて、エンゲージメントを上げるためになにをすればいいのか、と実効性のある施策を考えられるようになったのは大きな成果でした。

たとえば、以前から社内で推進していた1on1も、エンゲージメント診断の結果を下敷きとして個々をしっかりケアする手段として、より具体的に成果に繋がる施策になっていっています。

大川

こうしてエンゲージメント診断の結果を受けて会社がなんらかの対策を打ってくれると、ちゃんと自分たちを大切にしてくれているんだ、という実感を持てますし、そのこと自体が自分のエンゲージメントの向上に繋がるんですよね。
なんとなく分かっていたことのようですが、あらためて実感することができました。

なんとなく感じていた、なんとなく分かっていた、そういった「実感」に理由付けがなされたということですね。

大川

はい。そこで2024年度に入り対象を人事部から本社・営業本部全体へと拡大してデータを検証し、実際にエンゲージメント向上に繋がる施策へと繋げていったところ、本社・営業本部の皆さんから「仕事にやりがいが感じられるようになった」「働きやすくなった」とポジティブなフィードバックを得ることができたんです。

実際、私個人としても、エンゲージメント診断前からおこなわれていた1on1が上司と私とでお互いに根拠を持って話し合える場になったことで、より実のある時間が作れるようになったと感じています。

第一貨物株式会社 大川様
仁科

私は兼子と大川の話を聞いて、時間はかかるかもしれないけれど、この施策を全社に拡げていったら離職防止や生産性向上にきっと効果があるだろうと思いました。

そこで大川に、これまでの成果と彼女の実感、そしてこれを全社員に広げるとどんな効果があるかということを中心に、本社・営業本部の管理職を集めた報告会をおこなうよう指示しました。そこには社長自ら参加いただきました。

その中では、エンゲージメント診断の結果がどうだったか、その結果、なにに問題があり、その解決のためにどんな施策に繋げていったか、といった具体的な話もしてもらいました。

実際にエンゲージメント診断を受けた大川自身の実感と、数値として表れた診断の結果の両面からその有用性を説明できたことで、参加していた社長の意識が変わって、それをきっかけに潮目が変わったなという実感があります。

その報告会をきっかけに、全社員に拡げていこうという機運が高まったのですね。

兼子

はい。社長も賛同してくれたので、今後は全社員に拡げていこうという方向性に固まりました。
ただ、実際に全社で活用するためには実際に現場で運用する管理職の理解も得なくてはなりません。

大川

その点についても、先ほど仁科から話のあった報告会以降、管理職の方々から私宛にエンゲージメント調査の結果の見方や、1on1に活かす方法などを尋ねてくださる質問が届き始めていて、少しずつ前に進めている実感があります。

まだまだ一部の方だけですが、このチャンスを逃さずにプッシュしていけば、きっと全社に拡げていけると考えているところです。

仁科

エンゲージメント診断を最初から全社員に導入しようと考えていたら、このように展望が拓けることはなかったかもしれません。遠回りのようですが、スモールスタートは当社に合った方法でしたね。

全社員への横展開 マイナビと併走する今後の展望

第一貨物様インタビューの様子

では最後に、今後の展望についてお伺いしたいと思います。全社員への拡大という大きな画はあると思いますが、どのように進めていくご予定ですか?

兼子

マイナビさんからの提案を受けて、社員と会社とが双方向に意見を交換しながらエンゲージメントを高めていく計画をスタートさせました。

具体的には、エンゲージメント診断によって浮かび上がった課題に対して会社がきちんと行動をし、社員のエンゲージメントが高まる施策を打っていくこと、あわせて社員の能力向上のために研修を充実させていくこと、という内容です。

さきほど大川が言っていたように、会社が「自分たちを大切にしてくれている」という実感は、やはりエンゲージメントには欠かせませんし、生産性向上のためにスキルを磨くことも、業績向上のためには欠かせません。

これからは会社が社員へ一方的にスキル向上を求めるのではなく、お互いに意見を交換しながら、働きやすい職場作りと社員のスキル向上を同時に叶えていきたいですね。

大川

私の方では、5,500名の社員全員に対してエンゲージメント診断を実施できるよう、準備を進めています。とにかく社員数が多いので地道な作業が続きますが、マイナビの担当者の方から二人三脚でサポートしていただけるからこそ、こうしてプロジェクトを進めることができていると思います。

仁科

社内のことだから、社内のメンバーだけでやろうというのは古い考えだし、それでは変化の激しい今の社会環境には適応できません。

社内のことは私たちがしっかりと見て着実に施策を打っていきながら、マイナビさんから人材・採用に関する正確でマクロな情報と、親身でミクロなサポートを受けてこれからも二人三脚、一緒に頑張っていきたいですね。

スモールスタートで始めたエンゲージメント診断のお話は、導入に迷われている多くの方にとって価値ある事例となると思います。正しく、『百歩の道も一歩から』ですね。今日は参考になるお話ありがとうございました!

※取材内容は2024年5月22日現在の内容です。

〈プロフィール〉

仁科 秀樹 さん

常務取締役 人事部長

1989年入社以降、ロジスティクス事業、輸送系事業の営業を皮切りに、事業所の運営など、現場の第一線を長く経験、宮城県、岩手県、北海道を管轄する支社の管理スタッフを経験した後、経営企画部長、天童支店長を歴任、現在は、常務取締役として、人事部門最高責任者として活躍。
『現場とともに』がモットーのプロパー役員である。

兼子 邦浩 さん

管理本部 人事部 次長 兼 中央研修所長

入社当初、経理事務の下積みを経験した後、国際・国内向け航空貨物の営業に従事、営業本部営業部次長を歴任。途中、コンサルティング会社に出向するなど、異色の経歴を持つ。現在は、人事部次長として、採用・教育を担当、中央研修所の所長を兼務する傍ら、県認可の各種学校『第一貨物流通技能専門校』の校長も務める。

大川 佐知 さん

管理本部 人事部 人事グループ

2022年入社、愛知県生まれ。信州大学で農学を学び、東北の物流会社へドライバー職志望として入社した異色の経歴を持つ。大学時代は山岳部に所属、山岳で鍛えた計画力と実行力で、山積する人事課題に果敢に挑み、文字通り、更なる高みを目指している。

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