「現場で使える」スキルと知識にこだわった、テラルテクノサービスの新しい新入社員研修
- 業種
- サービス・インフラ
- 従業員数
- 230名
- 設立
- 1976年
- 本社
- 東京都
課題背景
従来の座学中心の研修では、現場で求められる判断力やコミュニケーション力が十分に身につかず、新入社員が業務に戸惑うケースが多発。また、主体性の育成も課題だった。社外研修では受講者の様子が把握しづらく、育成効果の実感も得にくいという運営面の課題も抱えていた。
成果
研修で学んだ内容を業務に活かせるよう映像とワークショップを融合した「ムビケーション」を導入。業務に直結するスキルを段階的に習得できる全10日間の研修を設計し、実践形式で主体性と対応力を育成。講師による緊張感の演出や細やかなフォローにより、現場で活きる力を確実に定着させた。
昨今の厳しい採用環境の中、せっかく採用できた新入社員をどのように育成し、戦力化していくか。これは、企業が共通して持つ「永遠の課題」といえるでしょう。
もちろん多くの企業ではこの課題を解決するため、新入社員研修を実施していますが、そこにはまた別の課題があります。そのうちのひとつが「研修の内容を、いかに現場で活かしてもらうか」です。想定外の事態も起こりやすく、臨機応変な対応が求められる業務の現場。そこで研修の成果を発揮してもらうためにはさまざまな工夫を凝らす必要があります。
そのような工夫の1つとして、テラルテクノサービス株式会社が取り入れたのがマイナビの提供する「ムビケーション」です。
このリアルな職場環境を再現した、映像とワークショップを融合させたビジネスシミュレーション研修を「総まとめ」として、「現場の実態」を反映した10日間に及ぶオリジナルの長期研修を実施した同社。「研修」と「現場」がいかに繋がり、新入社員の戦力化にどのように寄与したのでしょうか。人材育成を担う角田様にお話を伺いました。
「現場で活かしにくい」新入社員の言葉で研修の再構築へ
今回、マイナビの「ムビケーション」を含めた新入社員研修をご導入いただいた経緯を教えてください。
(以下、角田)
これまで当社では、新入社員には外部でおこなわれている一般的な公開研修を受けてもらっていました。
ビジネスマナーや社会常識といった基礎的な内容で、それ自体は社会人にとって必須ですし、どの企業でも通用するカリキュラムだと私自身は思っていたのですが、座学中心の講義であったことから、現場での仕事も多い当社とは合わない面もあったようです。新入社員から「実際の仕事で使える場面が少なかった」という声が寄せられました。
当社は、設備工事や設備設計などを請け負う施工管理会社です。専門用語も多く、現場での臨機応変な判断や、施設オーナー様・施主様・職人の方々といった多くの関係者と、円滑にコミュニケーションをとることが求められます。
従来の研修だけではその部分がなかなか学べず、現場に出て戸惑ってしまうことが多いようでした。また、会社としても公開研修は社外の会場でおこなわれるため、受講者(新入社員)の様子を把握しにくいという課題は前々から持っていました。
そうした背景もあり、もともと新卒採用でお世話になっていたマイナビに「当社の環境や仕事の特性に合わせたオリジナルの研修を実施できないか」と相談したのがきっかけです。そしてご提案いただいたのが、当社の仕事の現場で求められる実用的なスキルやコミュニケーションを学ぶ7日間の座学と、3日間のムビケーションでそれらを「実践」するという、今回の研修カリキュラムです。
具体的に、どのような点に魅力を感じて導入を決められたのでしょうか?
第一に、私がムビケーションの体験版に参加して「おもしろい!」と感じたのが大きいですね。映像と研修会場での体験がシームレスに繋がっていて、没入感もありましたし、他では見たことのない研修スタイルが新鮮でもありました。
これこそまさに、新入社員から出た「実際の仕事で使える場面が少なかった」の声を解消する一手だと確信しましたね。
カリキュラム改善だけではない 新入社員の「意識改革」も
新入社員研修の再構築によって、新入社員自身にはどのように変わってほしいと考えていましたか?
大きく2点です。
まずは彼らの声を反映し、研修を通じて現場で使える知識やスキルを身につけ、現場での戸惑いを感じずに仕事ができるようになること。そしてもう1つが、「ビジネスパーソンとしての主体性」を持ってもらうことでした。
近年の新卒採用市場は採用側(企業側)にとって非常に厳しく、企業も「選ばれる側」として学生に向き合う場面が増えています。しかし、現場に出れば一人ひとりが会社の代表であり、責任を持って成果を出す立場です。研修を自分事として捉え、主体的に学び取る意識への転換を促すことが、今回の再構築でとくに重視したポイントでした。
そのような目的を、研修のカリキュラムにはどのように反映しましたか?
まず、カリキュラムを「マナーと基礎スキルの獲得→思考・コミュニケーションスキルの獲得→主体性の獲得」と3つのステップに分け、全体で10日間程度で構成しました。
まず業務で必要なビジネスマナーやパソコン操作といったハードスキルを習得し、その後にロジカルシンキングやコミュニケーションといった現場で求められるソフトスキルを習得、そして最後に総まとめとしてムビケーションを活かした実践形式でそれらを「自分のもの」として定着させる、というものです。
ロジカルシンキングとコミュニケーションは、新入社員研修としてはやや高度な内容にも思えます。
そうかもしれません。しかし、基礎・発展・実践の3段階を丁寧に踏むことで、最終的に研修の内容が定着し、そのまま現場に出られる基礎力になると考えてこの構成にしています。
カリキュラム設計ではマイナビの営業担当と細かな打ち合わせを重ねました。想定の日数内に収めるために、パソコンスキルは当社でとくに利用頻度の高い領域に絞っていただくなど、手厚いカスタマイズを提案していただいてとても助かりましたね。
手厚いフォローアップと「厳しさ」の演出 現場での戸惑いを解消
仕上げとしておこなったムビケーションの内容について詳しく伺わせてください。どのような内容だったのでしょうか。
今回のムビケーションは、新入社員が「企業Aの出向社員」という役割を与えられ、動画内の登場人物から出されるさまざまなタスクをこなしていく、という実践シミュレーション形式でした。
たとえば、動画内で企業Aの先輩役に「○○社との会議資料を準備して」と頼まれると、新入社員はチームで教材として渡された資料を見たり、会場にいる講師(上司役)に質問したり相談したりしながらそのタスクをこなしていきます。
このとき、上司役の講師の方にはワーク中は場の緊張感を維持していただくよう、事前にお願いをしていました。
その意図はなんでしょうか?
実際の現場よりも緊張感のある場面を研修で経験してもらうことで、仕事の現場に出たときに、ある程度余裕をもって臨むことができると考えたからです。
一方で、受講者のモチベーションに影響が出ないよう、マイナビと相談のうえ十分な対策も講じました。
まず、講師に対する恐怖心を持たないよう、「役」が抜けている時間には優しく、親身になって接していただきたいという難しいお願いも同時にさせていただきました。講師の方にはどちらも見事に叶えていただいたと思います。
加えて、研修中はマイナビのスタッフの方と講師の方が一人ひとりを細かく観察し、その状態を当社に報告していただきました。当社でも一人ひとりと定期的に面談をしていたので、その内容をマイナビと講師の方にフィードバックし、相互に情報交換することで新入社員を全員でバックアップし、最後までモチベーションを維持できたと思います。
そこまでの配慮があれば、高いモチベーションを維持できそうです。実際、角田さまは、現場でムビケーションをご覧になっていかがでしたか?
講師の方の演技力に驚いたのはもちろん、自分の新人時代を思い出しながら「私もこんな研修を受けてみたかったな」と率直に感じました。
やっぱり、現場に出てから先輩や上司に質問をしたり、お伺いを立てたりするのは緊張しますよね。それをシミュレーション形式で現場に出る前に経験できるというのは、とても強い武器になるはずです。
また、ムビケーションの中で出される「タスク」の設計も巧妙で、それまでの研修で身につけてきた「ハードスキル・ソフトスキル」を余すところなく駆使する必要のあるものでした。まさに「基礎・発展・実践」の締めとして最適だったと思います。
研修の成果は現場にあらわれる その評価は?
今回の研修を受けた新入社員はすでに現場に出られていると思います。研修の成果は感じていらっしゃいますか?
はい。ムビケーションが始まった頃から新入社員たちは「自分がやらないとだめだ」と主体的に動きはじめました。短期間での成長に驚いていたのですが、現場に出てからはさらに成長しています。
たとえば、「メモを取る」習慣が完全に身につき、オフィスでも現場でも活躍している、という報告が現場から上がってきているのは嬉しい驚きでした。
メモのとり方は研修前半の「マナー」のパートで教えていたのですが、その後のムビケーションでタスクをこなす場面ではもちろん、現場に出てからも職人さんや施主様の言葉を丁寧にメモして次の仕事に活かしたり、上司への報告書にもメモが添付されて分かりやすくなっていたり……。
期待以上の効果がありました。
まさに「現場で使える」スキルを身につけられたのですね。
そう思います。
また、ムビケーションの効果として上司や先輩とのコミュニケーションにいい意味で「物怖じしない」ところがあり、仕事がスムーズに進むと現場からも声が上がっています。
つまり、「自分がいましている仕事がなにに繋がるのか」「そこで自分ができる最善はなにか」と考えられているということです。それこそ、当社が求めていた「ビジネスパーソンとしての主体性」だと感じます。
今後も、同様の研修を続けられるご予定でしょうか。
ムビケーションの効果は実感しているので、ぜひ続けていきたいですね。ただ、新入社員はその年ごとに性格や志向性も異なるので、マイナビと相談しながらこれからも細かくカスタマイズしていき、本当の意味で「効果のある」研修を続けていければと思っています。
また、こうした「効果のある」研修を続けることで採用ブランディングの面でも良い効果が出ることも期待しているので、パワーアップさせながら続けていきたいです。
今日はありがとうございました!
現場で活きる学びは「設計」と「チューニング」から
今回の事例からあらためて見えてきたのは、研修の成果は「どれだけ現場に接続する形で設計・運営できるか」にかかっているという点です。
事前のカリキュラム設計では「基礎→応用→実践」と明確なステップを描き、実施の過程では参加者一人ひとりの反応を丁寧に観察しながら、必要に応じてカスタマイズやフォローを重ねる。こうした工夫の積み重ねが、最終的に「現場で使えるスキル」と「主体性の獲得」に結びついていました。
つまり、新入社員研修を成果に繋げる鍵は“設計と運営の精度”にあるといえるでしょう。自社にとっての「現場のリアル」をどこまで研修に落とし込み、どれだけきめ細かく伴走できるか——その姿勢こそが、次世代を育てる確かな土台になると感じます。
※取材内容は2025年9月5日現在の内容です。
〈プロフィール〉
角田 光穂 さん
新卒で金融業界の営業職を経験したのち、人事領域へとキャリアチェンジ。現在は新卒・中途の採用業務、インターンシップやイベントの企画・運営、研修を担当。
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