評価制度刷新への挑戦 ムビケーションの「リアリティ」が社員を変える
- 業種
- サービス・インフラ
- 従業員数
- 64名(2026年1月1日現在)
- 設立
- 2003年
- 本社
- 東京都
課題背景
事業モデルが個人営業中心からチーム受注型へ転換するなか、成長とガバナンス強化のため人事制度を刷新。もともと目標が上から与えられる文化が根強く、自ら目標を設定し主体的に行動する風土づくりも課題だった。新制度の説明会やロールプレイを実施していたものの、制度の理解促進をする必要があった。
成果
全社員向けの評価制度活用研修と管理職向け評価者研修を通じて、制度への理解と当事者意識が向上。同じ映像を見て評価する評価者研修ムビケーションのワークにより、それぞれの評価基準の違いや、自身の評価の偏りに気づく機会が生まれた。制度を「自分ごと」として捉える意識が高まり、自律自走への一歩が踏み出せた。
人的資本の情報開示や組織のガバナンス強化が進むなか、評価制度を見直す企業が増えています。目標管理・評価制度を導入し、成果だけでなくプロセスや行動も評価する制度設計は、もはや珍しいものではありません。一方で、制度をつくっても、目標設定が「作業」になり、評価が「結果の採点」にとどまってしまうなど、運用や浸透に課題を抱える企業は少なくありません。研修を実施しても、実務に結びつかないというお悩みも多く聞かれます。
そこで今回は、出張支援・転勤支援事業を手がけるステラーフォース株式会社を取材しました。同社では、評価制度活用研修と管理職向けの評価者研修ムビケーションを実施し、社員が評価制度を「自分ごと」として捉える状態を目指しています。その取り組みと制度浸透の工夫について、人事戦略室の鵜澤室長と田村さまに伺いました。
「降ってくる目標」から「自分で立てる目標」への大転換
まず、御社が人事制度改革に着手された背景を教えてください。
(以下、鵜澤)
2017年の代表交代を機に、当社のビジネスは長期・個人営業・インセンティブ型から、短期・チーム受注型へと軸足が移っていきました。事業モデルが変わる以上、評価制度もそれに合わせて刷新する必要がありましたが、それが追いついていなかったのです。
そこで私が2025年に入社し、成長とガバナンスの強化に向けた改革に着手することになりました。
このような評価制度の刷新では、管理職向け研修をおこなう例が多いです。御社ではなぜ評価制度活用研修を全社員対象にされたのでしょうか。
(以下、田村)
背景として変化があまりに大きかったことがあります。鵜澤の言うように、これまでは個人営業が中心で、個人目標は全社目標からのドリルダウンで下りてくるものでした。そのため組織全体の課題として、自分自身で目標を設定し、主体的に判断して行動・改善をおこなう「自リツ自走」の弱さがあります。
組織全体として自ら課題を抽出し、解決行動を取れる組織になるために、目標設定や評価の方法も「自分で目標を立て、その過程も見ながら最終の評価をする」という方針に切り替えることになったのです。この大きな変化を受け入れるには、「評価する側とされる側の両方」に対するアクションが必要だったというのが、一番大きな理由です。
まず全社員が同じ理解に立つ必要があったのですね。
そのとおりです。これまでも人事制度はあったものの、正しい理解の上で運用されてはいませんでした。そのため今回の新制度においては、自ら目標設定をし、振り返った上で管理職と握り合っていくという取り組みはほぼ初めてになります。
ですから、まずは全社員が同じ制度理解に立ち、そのうえで部課長には評価者としてのスキルを重ねてもらう。そんな二階建ての設計にしました。
「情報量」と「受講者の理解」 過去の学びが、設計を変えた
これまでも制度理解・制度浸透のお取り組みをされてきたと思います。どのような内容だったのでしょうか。
制度の説明会やロールプレイをおこない、管理職を含めた全社員への理解促進を進めてきました。しかし反省もあります。
たとえば説明会では、通常業務に配慮し、制度全体を2時間で理解できる内容になるよう工夫したのですが、情報過多な側面があったようで、十分な理解には至りませんでした。また、評価者(管理職)向けには3人1組のロールプレイもおこないましたが、なかなか思うような効果は得られずもどかしさが残っていたことも事実です。
なるほど。そこで、2026年度は研修を刷新されたのですね。
はい。2025年は「制度を理解するための説明会」と「実践に備えたロールプレイ」という二段階の研修で理解と浸透、そして実効性を得ようという狙いでしたが、より適した方法があるのではないかと思い、再設計することにしました。
動画で「同じ場面」を見る——ムビケーションという体験
2026年はマイナビ研修サービスをご利用いただきましたが、導入決定までの経緯を伺えますか。
まずはなにをどう変えるべきかを知るためにも研修パートナーの再選定をおこないました。田村がいくつかのパートナー候補とコミュニケーションをとり、そのなかでも当社が目指す変革の姿と現状の課題に対し、とくに理解が深かったマイナビと組むことになったのです。
打ち合わせを重ねながら、丁寧なヒアリングとご提案で効果的なプログラムを練っていただけたのが助かりましたね。
お打ち合わせを重ね、2026年の5月には全社員向けの評価制度活用研修と、部課長向けの評価者研修ムビケーションを実施しました。実際の評価が始まる、わずか1か月前というタイミングです。
直前ではありましたが、ご提案いただいたムビケーションへの期待感が強く、きっといいものになるという確信もありました。主観カメラのドラマ映像で職場のよくある一場面を疑似体験して、そこから学ぶ研修ということで、一歩進んだ制度理解につながると思ったのです。
なぜ、映像を使う設計にされたのでしょうか。
座学の一方通行では、受講者の記憶に残りにくいと考えていたからです。動画、しかも一人称視点の没入感がある仕掛けが入ることで、全員が「同じ動画で疑似体験をした」という共通の土台を持つことができます。
ロールプレイは、昨年からどう変わりましたか。
動画で同じ業務シーンを観察して、自分ならどう評価するかをワークで書き出し、グループで共有してから、ロールプレイに臨む、という順番にしました。すると、役割を演じることではなく、実際に自分ならどう振る舞うか、そこに専念できたんです。ひと手間かけたことで、「機能するロールプレイ」に生まれ変わりました。
「評価はこんなに違うのか」という驚きと受講者に起きた変化
研修当日の雰囲気はいかがでしたか。
昨年とは明らかに違いました。メモを取る社員が増えて、グループでの意見交換も活発になったんです。
きっかけは、同じ動画を見て各自が評価をつけたあと、隣の人と見比べた瞬間でした。同じ場面を見ているはずなのに、評価が食い違う。その事実が、受講者に大きな気づきをもたらしました。
受講者からは、どんな声が上がりましたか。
「評価が人によってこんなに違うのか、自分の視野の狭さに気づけた」——そういう声がありました。自分の評価の目線が無意識に偏っていたことを実感したのだと思います。
先ほどのお話だと、研修の1か月後には実際の評価が控えていたのですよね。
はい。役割等級評価が目前に迫っていました。
「自分の部下の評価はどうなるのだろう」と考えることのできるリアリティのある映像と、実際の評価直前という時機が重なって、受講者の当事者意識がぐっと引き上がりました。研修で扱う内容が、「単なる一般論」ではなく、「近々やることになる自分の仕事」そのものだったことが効いたのかもしれませんね。
外部の力を借りながら、自社の言葉で届ける——制度を現場に根づかせるために
受講者が置いていかれなかった理由は、研修の中身だけではないと感じました。
二つのポイントがあったと思います。まず挙げたいのは、当社の課題と目標に寄り添い、細かなところまで伴走してくださったマイナビによる研修のカスタマイズです。
たとえば、研修の資料や進行には当社の制度用語をそのまま織り込んでもらいました。グレードや必達ライン・ストレッチラインといった自社の言葉をそのまま使っていただいたことで、混乱なく進められました。一般的な用語だったら、受講者は頭のなかで変換しなければなりませんから、きっと質問が増えていたと思います。
こうした工夫のおかげで、研修で使用したテキストを「記入に迷ったらテキスト◯ページ参照」のように、そのまま当社の目標設定シートの記入ガイドとしても使ってみました。学びの場面とリンクするので社員にとっても使いやすく、シートの意義を振り返る機会にもなりました。
もうひとつのポイントはなんでしょうか。
外部の力の使い方です。社内メンバーだけでおこなう説明会や研修では、どうしても「社内からのメッセージ」として受け止められやすく、会社としての本気度や内容の重要性が伝わり切らないことがあります。
マイナビのような外部エキスパートと組んだ研修であれば、そこで話されている内容が一般的なものであったとしても、従業員には「会社は本気なんだ」「本当にこの会社は変わっていくんだ」「自分たちも変わっていかなくてはいけないんだ」ということが伝わりやすくなります。実際、今回の研修ではその効果がしっかり出たのではないでしょうか。
推進体制そのものにも、御社ならではの選択があったと伺いました。
人事戦略室で実務を担う田村は、もともと現場の営業出身です。制度の落とし込みに苦労した当事者としての感覚を持ちながら、今は人事側の浸透設計を担っている。現場の“肌感”と人事の視点を一人のなかで往復できることが、制度を現場の言葉に翻訳する力になっています。
制度は「一度」では浸透しない 地道な努力が成果を結ぶ
今後も同様の取り組みを続けていくことで、さらなる理解と制度の浸透が図れそうですね。
おっしゃるとおりです。社員の理解には、どうしても濃淡があります。理解しようとする人、理解したいけれどどこから理解すればいいかわからない人など、どうしてもグラデーションができるんです。
だからこそ、内部の勉強会、外部研修、プロの講師といった多方向からの刺激を組み合わせて、反応を見つつ、次の一手を考えていく必要があります。研修は“記憶に残すきっかけ”であって、定着させるのは、その後の振り返りと、実務での活用の積み重ねなのです。
最後に、今後の展望を教えてください。
現在は2026年からの3か年計画を描いています。初年度はツールの使い方を理解し、次年度は振り返りができる状態へ。そして2029年には、全員が自立自走している状態をつくりたいと考えています。
評価制度を「結果の採点」から「次の一歩を生む対話」にしていきたいんです。マイナビには、この計画を達成するためにこれからも伴走してほしいと思います。
担当コンサルタント:名倉 崇広
東京大学教育学部を卒業後、人事・教育業界を志し、2018年にマイナビに新卒で入社。2023年に主任職、課長職を拝命。
200名以上の受講生に向けた新卒3ヵ年育成・次世代リーダーに向けた半年間のプロジェクト研修等、中長期のプロジェクトの構築・運用のご支援を得意とする。現業の傍ら、躰道という武道において選手、指導者としても活動中。
〈プロフィール〉
鵜澤 篤人 さん
2025年1月に入社し、人事戦略室を立ち上げ。全社員との1on1から組織の課題を抽出し、今回の制度変更を主導。
田村 彩華 さん
営業として現場を経験したのち、2025年5月に人事戦略室へ。現場の納得感を知る当事者として、制度の実務・浸透設計を担う。
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